【水を使わず布を染める】方法があるらしい

2019年3月、国連貿易開発会議(UNCTD) からファッション産業は2番目に環境コストの高い汚染産業だと名指しされてしまいました。 

1位が石油産業で、その次なのには驚きました。

あれから2年、環境への意識はますます高まっています。 


これまで90年代、2000年代と10年に一度くらいエコブーム(ブーム?)が起きたが結局ビジネスに結びつかないという事で立ち消えになっていきました。 

日本のアパレル 、小売業界では環境よりもビジネス優先されてきたからです。 しかしこれは責められません。

2000年以降のファストファッション台頭、そしてデフレにより安い商品が支持される状況があったのです。


ところが近頃の海外、国内生地メーカー展示会でのリサイクル素材推しにこれまでと違う本気さを感じます!!   

背景にファッション産業が環境負荷責任を問われている事が見えてきます。

EU方針『ガソリンやディーゼルなどの内燃機関エンジン車の新車販売を2035年に事実上禁止』と同じくらいのプレッシャーです。 


今後の繊維産業は環境負荷を考え行動をしていくか、しないか2手に分かれていく事になると思います。

正直コロナ禍の中、環境負荷軽減商品という打ち出しで1〜2割高の商品を買ってくれるのは難しいでしょう。理由として機能や価格などお客様がメリットを感じにくいと思うからです。


ただでさえアパレル 業界は厳しいのにこの上・・・ と泣き言いいたくもなりますが、解決していくしかありません。


さて、環境負荷軽減商品にはいくつかの方法がありますが一番認知されているが循環型。

代表的なのがペットボトルや、フリース回収などの再生ポリエステル素材です。 

流通量が増えてくれはコストも下げられるし、企業側もイメージアップする事ができます。

ユニクロが始めているので今後社会に浸透していくでしょう。  


これとは別に生産過程での環境負荷軽減策が急がれます。

今回テーマの【水を使わず布を染める】方法もその一つです。


国連貿易開発会議(UNCTD) に発表された中で水の問題は特に深刻だと思いました。

世界の繊維産業において1年間に使用する水の量は 

『50m プール 3700万杯』  

といわれても凄すぎてピンときません。

 

『全ての産業排水のうち20%をファッション産業がだしている』

といわれもまだ感覚的にわかりにくい


つぎはどうでしょうか?

『コットン製のTシャツを1枚作るために必要な水の量は、2,720リットル。  それはひとりの人間が3年かけて飲む水の量』 


『ジーンズ1本作るために必要な水の量は、7,500リットル。  それはひとりの人間が7年かけて飲む水の量』


これは想像しやすい。

確かに悪者にされても文句はいえませんね・・・

Photo: Getty Images


 【今必要なのは持続可能な生産イノベーション】


水なしで染める方法は2種類ある。 

詳しくは” CLOSS APP  NONDYE "のページを参照ください。


CLOSS APP  NONDYE  水を大切にする生地I CLOTH APP


方法:1  原着糸げんちゃくし法 

 ポリエステルは糸になる前は液体である。それに顔料を混ぜ合わせてしまえば、水は不要という原理


方法:2  超臨界染色法 

かっこいい!  こういうネーミングのかっこよさって大事だと思う。


もともとは1980年代のカフェンレスコーヒーやタバコからニコチンを除去する方法として実用化されたが、染色に対する環境負荷の問題からドイツで超臨界染色法が開発されたそうだ。  さすがドイツ!! 


国内でも福井大学の堀照夫教授研究チームが行っています。


一般社団法人 色材協会-Japan Society of Colour Materialからお借りしました。

引用:http://www.shikizai.org/shikizai_column/vol21/index.html

従来法染色:古代から染色変わっていない染色方法→洗浄行程で大量排水と排熱をだしてしまう。

超臨界染色: 二酸化炭素を超臨界流体(気体のように拡散し液体のように密な状態)にして、生地に染料を入れていく。

二酸化炭素は当然気体なので乾燥させ必要はなく、その気体が糸に湿潤溶解していくという事だろうか。 

なんだか凄そうだ! 

引用 http://www.fklab.fukui.fukui.jp/kougi/foip/example/pdf/no093-01.pdf


染められるもの

ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリアミド  

◎羊毛や木綿などの天然繊維   

なんと、天然繊維も染められる!  これは良い。


”超臨界染色は欧米のみならず,アジアでも活発に実用化に向けた検討がされており,わが国では福井大学の堀照夫教授が中心となり,実用化が進められている。超臨界流体技術は環境低負荷というだけでなく,新規材料の調製法として,今後の展開が期待される。”

一般社団法人 色材協会-Japan Society of Colour Material コラムより引用


日本の研究者が頑張っているのは本当にうれしいし応援したい。


◎ファッション業界における課題

水を使う、排熱などエネルギーをいきなりゼロにすることは難しいが、環境負荷軽減を追求していかなければなりません。 しかも一過性では意味をなさないのです。

大きな課題は生産コスト   

現状維持もしくは以下におさえつつ生産できるようにしなかればビジネス化は厳しい。

循環型リサイクルも同じく生産コストの問題が大きい。 リサイクルコストがかかるがユーザーにとってはなんのメリットもないからです。 コストの上乗せで考えていては実現しない。 本当に難しい課題です。


ファッションは楽しく、時に気分をあげてくれる心の栄養だと私は考えています。 

なので業界が悪く言われるのは辛い!

いつかファション業界が環境負荷の少ない業界になる事を信じ、私にもできる事を進めていきたいです。











apollo hint box

上里 貴彦 TAKAHIKO UEZATO  ▶クリエイティブディレクター / ファッションデザイナー ・apollo design lab 代表

0コメント

  • 1000 / 1000